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MCT通信Vol.1 河北パワー食で全患者のエネルギーアップに成功
~リハビリテーション病院としての取り組み~

"河北パワー食"で全患者のエネルギーアップに成功

"患者さんに負担なく必要栄養量をどう摂ってもらうか"が鍵

当院は回復期リハビリテーション病院で、脳血管疾患、運動器疾患が各約4割、廃用性症候群の患者さんが1〜2割入院され、リハビリに励んでいます。急性期病院から移ってこられる患者さんの多くに体重減少がみられ、特に高齢の患者さんはフレイルやサルコペニアなどの問 題も抱えています。

リハビリ栄養では、リハビリによる 活動量を加味し、通常の食事よりもエネルギーやたんぱく質を付加する必要がありますが、廃用性症候群や認知症など、様々な要因で食欲不振の患者さんもおり、必要栄養量を摂取することが困難な患者さんもいます。以前は、エネルギーや栄養の付加分を主に栄養補助食品から補っていました。しかし、ほとんどの方に栄養補助食品を付けなければならなかったり、患者さんによっては1日に2個以上をつける必要があったりと、召し上がっていただく食事量も増え、患者さんの負担はもちろんですが、コスト面での負担もかかっていました。

MCTで食事の見た目を変えず、200〜300kcal/日アップ

当院は高齢な患者さんも多く、リハビリに耐えうる量 の食事をすべて摂っていただくことは難しい場合もあり ます。だからこそ患者さんの負担を減らし、食べきれる量を提供してあげたいという想いがありました。

そこで、中鎖脂肪酸であるMCTオイルをごはんに炊き込み、汁物にプロテインパウダーを混ぜた"河北パワ ー食"を開発しました。 "河北パワー食"は1日3食、リハビリの有無に関わらず全ての患者さんに提供しています。(※) 以前提供していた食事と比べて、エネルギーは200〜300kcal、たんぱく質は約5g程度アップさせることができました。MCTオイルやプロテインパウダーを使用する一番の魅力は、"普段の食事と見た目も量も同じ"ことだと思います。手軽にエネルギーアップができるMCTオイルのメリットや、"河北パワー食"についても色々な病院・施設の方に知っていただき、参考にしていただけたら嬉しく思います。

(※) たんぱく制限食には、プロテインパウダーを添加しない汁物を提供

河北リハビリテーション病院発! "河北パワー食" お食事&レシピをご紹介♪

"河北パワー食" 常食(昼食)

  • ご飯
  • コンソメスープ
  • 魚の明太マヨ焼き
  • マカロニサラダ
  • オレンジ

【栄養成分:1食分】
エネルギー :614kcal
たんぱく質: 21.5g
脂質: 22.6g
炭水化物: 79.0g
塩分: 2.3g

ご飯編

  1. 炊飯釜に精白米、水を投入。
  2. 精白米25gに対して、MCTオイル3gを計量・投入し、炊飯する。
  3. 炊き上がったら、底にオイルが溜まらないようによく混ぜる。
  4. 盛り付け時もオイルが残らないよう、随時混ぜながら配膳する。
  5. 茶碗に蓋をし、温冷配膳車で保温。

全粥編

  1. 鍋に精白米、水を投入。
  2. 精白米25gに対してMCTオイル3gを計量・投入し、炊飯する。
  3. 炊き上がったら、底にオイルが溜まらないようによく混ぜる。
  4. 盛り付け時もオイルが残らないよう、随時混ぜながら配膳する。
  5. 茶碗に蓋をし、温冷配膳車で保温。

汁物編

  1. 120ccに対して3gのプロテインパウダーを計量。
  2. 汁物を沸騰させた後、68度以下まで冷ましてから プロテインパウダーを入れる。
  3. 汁椀に盛り付け、蓋をし温冷配膳車で保温。
    ※ 69度以上だとパウダーが固まりになってしまうため、 必ず68度以下に冷ましてから投入。再加熱も不可。

"河北パワー食"開発秘話 〜栄養科の取り組み〜

開発のきっかけは院長先生

「低栄養状態の患者さんが多い」「やせで食が細い患者さんが多い」というのが、栄養科だけでなく他職種からも挙がる共通の悩みで、当院の大きな課題でした。3年ほど前、院長先生から "食事にMCTを使用してはどうか"という提案があり、その実現のため、栄養科が給食にMCT導入する方法について検討・思案することになりました。これが、‘‘河北パワ ー食’'開発のきっかけです。

何もないところからのスタートだったため、熊本リハビリテーション病院が取り組んでいる"熊リハパワーライス®"について情報収集をしたり、メーカーの方に訪問いただき、商品の使用方法を学んだりと、まずはMCTについて知るということから始めました。

栄養科管理栄養士萩原先生(写真:左)、猪瀬先生(写真:右)

「必要栄養量」「調理負担の軽減」「おいしさ」の3つを満たすために

MCTを 「何に」「どのくらい」「どのように」使おうか…検討事項はたくさんありました。

まずは、リハビリの活動量を付加した必要栄養量を算出しました。リハビリを行うことを加味した上で、活動レベルを基にした場合と、ハリスベネディクト式を基にした場合の2通りの方法で必要なエネルギー量を検討した結果、200~300kcal の増加が望ましいと考えました。
次に、何にどのくらい使用したらよいかということについては、「患者さんへの負荷が少ないこと」「全ての患者さんに提供できること」「調理負担が少ないこと」の3点 を考慮し、MCTオイルをご飯に使用することを決めました。当院では、ごはんの摂取率が約10割で最も多いため、ほぼすべての患者さんに召し上がっていただけると考えたためです。肉や魚メニュ ーでの使用も検討しましたが、嗜好によって残す方もいることや調理工程が増えることによる懸念もあり、ご飯が最適であると決定しました。

使用量については、必要エネルギー量を満たした上で、おいしく食べることのできる量と調理方法について検討しました。試作と試食を何度も繰り返した結果、米飯50gに対して3gのMCTオイルを炊飯前に入れて一緒に炊き込む方法が、最もおいしく食べやすく仕上がることにたどり着きました。また、当初ご飯に入れるという方法で添加を検討していたプロテインパウダーについては、ご飯の味わいや色味の変化が起こる心配のないよう、同じく全員に提供する汁物に入れるという方法で提供することとなりました。

おいしいから満足感もアップ!"河北パワー食"が完成

完成から今日まで、患者さん全員に提供している"河北パワ ー食"。
患者さんからは 「ご飯がおいしい」という嬉しいお声や、オイルの使用によってご飯にツヤが出ることで、「高級な米を使用しているのか」などというお声をいただくことが増えました。以前よりも満足度の高い食事を提供することができていると実感しています。また、導入前と導入後での患者さんの「体重」「血清Alb 値」「FIM運動項目」「FIM認知項目」の4項目の変化について解析し、第26・27回合同学術大会日本摂食礫下リハビリテー ション学会での報告も行いました。

結果、「血清 Alb値」「FIM運動項目」の2項目について有意差がみられたことから、本研究によって"河北パワー食’'の導入は、栄養状態の維持・改善やリハビリに効果的に寄与している可能性があることが明らかになりました。今後の展望として、有意差があった「FIM運動項目」の中でも特にどの項目に改善がみられたかなど、より詳細な研究にも取り組んでみたいと考えています。

"河北パワー食"のご飯(常食)

MCTオイルを入れて炊き込んだ常食のご飯。 見た目は通常のご飯と変わらず、油が入っていることはほとんど分からない。1食で約80kcalのエネルギーアップができる。

"河北パワー食" 開発から導入までのプロセス

教えて!萩原先生

"河北パワー食"導入のための疑問や栄養成分について、その他河北リハビリテーション病院でのMCTオイルの活用方法などをお伺いしました。

  1. 給食へのMCT導入。委託給食会社さんとの調整はどのように行いましたか?

    調理工程の増大やコスト面に大きな負担がかかるような要望は、委託給食会社さんでの対応が難しい場合もあります。"河北パワー食"導入にあたって、費用や作業面などで委託給食会社さんへの負荷が少なく、現実的な方法で提供できるよう協同で様々な方法を思案し、何度も検討を重ねました。

    当院では、MCTオイルやプロテインパウダーの購入費用は病院側が持ち、委託給食会社さん側の作業工程を増やさないよう、患者さん全員に同じ食事を提供することで"河北パワー食"の提供が可能となりました。

    【MEMO】
    MCTオイルは炊飯釜に直に投入し、ボトルごと残量を計ることで軽量の手間を削減する工夫も!

  2. MCTは脂質ですが、 PFCパランスはどのように考えていますか?

    MCTオイルを"脂質"として栄養計算すると、PFC比のFは30%を超えてきます。しかし、MCTは通常の脂質(長鎖脂肪酸)とは代謝が異なるため、当院では、「脂質量」と、脂質の内訳としてその中に含まれる「中鎖脂肪酸量」とを分けて算出・記載することで、栄養管理を行っています。

  3. 退院時の栄養食事指導でも、MCTオイルや"河北パワー食"を勧めていますか?

    退院時には"河北パワー食"を提供していたことをお伝えしています。MCTオイルに関しては、ご飯のほか、汁物や料理、飲み物などにかけるなど様々な使用方法があるので、商品とレシピ・使用方法を一緒に紹介するようにしています。

  4. MCTオイルの経管栄養利用について、使用感はいかがですか?

    少量でエネルギーアップできるという点から、当院では経腸栄養の患者さんにもMCTオイルを使用することがあります。投与量を大きく変えずにエネルギーアップできるMCTオイルはとても使いやすいです。

施設DATE

社会医療法人 河北医療財団河北リハビリテーション病院

〒166-0013東京都杉並区堀ノ内1-9-27

河北医療財団のリハビリテーション部門の拠点として2001年2月に開設。以来、杉並区西部の地域リハビリテーションの中核を担い、医療と心のこもった良質なケアを通じて、それぞれの患者さんに最も適した専門的なリハビリテーションを実施している。地域完結型のリハビリテーション医療を通じて、地域の医療、介護、福祉を繋ぐ要となっている。

「MCT通信」編集部(トータル・コミュニケーションズ(株)内)

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