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「また来たい」と思ってもらえる栄養指導のコツ
― 患者さんとの信頼関係が、継続的な行動変容を支える ―

栄養指導では、患者さんの行動変容を継続的に支援することも、管理栄養士の大切な役割です。
しかし、限られた栄養指導の時間の中で、患者さん一人ひとりの生活背景や準備性を理解し、その方に合った支援につなげることは決して簡単ではありません。
そこで今回は『「また来たい」と思ってもらえる栄養指導』をテーマに、患者さんとの信頼関係の築き方や、継続的な栄養管理につなげるためのポイントについて、日々、さまざまな場で栄養指導や食事相談を行っている広瀬歩美先生に伺いました。

PROFILE

株式会社プラスウェル代表取締役(管理栄養士)

広瀬 歩美先生

「また来たい」と思ってもらうことの大切さ

私が新卒で栄養指導を担当するようになった頃は、「限られた時間の中で、患者さんがもつ食生活の課題には、すべて触れなければ」と焦っていました。

それは、「患者さんに少しでも良くなってほしい」という思いに加えて、私が指摘しなかったことで患者さんが「このままで大丈夫なのだな」と誤解し、病状が悪化してしまったらどうしようという不安があったからです。

そのような焦りや不安から、どうしても「気をつけましょう」「減らしましょう」といった注意の言葉が自然と多くなっていたように思います。

もちろん、患者さんに良くなってほしいというその思いは今も変わりません。

しかし、栄養指導を長く続ける中で、多くの患者さんから「一度の栄養指導で、すべてを解決しようと焦る必要はないのだ」ということを教えていただきました。

その経験を通して、私が日々の栄養指導で大切にするようになったことをご紹介します。

まずは、安心して話せる関係をつくる

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打ち明けてくれたこと自体に価値がある

栄養相談では当然のように食生活を伺いますが、食事の話を聞くことは、その方の暮らしや人生そのものを聞くことでもあります。

「夜遅い時間に食事をしている」「間食が多い」といった食生活の課題について、多くの方はご自身でも「良くない」と分かった上で話してくださっています。話そうと思わなければ隠すこともできる中で、あえて勇気を出して打ち明けてくださっているのです。

だからこそ私は、患者さんが後ろめたさを感じている箇所に対して、まずは「自分だけじゃない」と安心できる雰囲気をつくることを大切にしています。

「自分だけじゃない」と感じてもらう

例えば、「残業が多く、どうしても夜遅い時間に食べてしまう」という方がいらっしゃったとします。

そういう方には、まず「毎日遅くまでお仕事、お疲れさまです。お身体もしんどいですよね。」と労いの言葉をおかけした上で、「わかります。私も忙しい日や帰りが遅い日って、つい食べ過ぎてしまうこと、ありますよ。」などとお話しするようにしています。

このように患者さんに「自分だけじゃないんだ」と感じていただけると、相談の雰囲気がスッと和らぎ、お互いの距離感が近くなると感じています。

一緒に続けられる方法を考える

こうして安心して話せる関係ができたら、次は具体的な解決策を一緒に考えます。「休日の食事で調整する」「夕方に軽く食べられるものを用意する」など、いくつかの選択肢を提案し、「○○さんにとっては、どれが続けやすそうですか?」と対話を通して、スモールステップの行動目標を設定します。

管理栄養士が一方的に指導するのではなく、一緒に「現実的な方法」を考える姿勢そのものが、「また相談したい」と思っていただける関係づくりにつながるのではないかと感じています。

「あなたのことを覚えています」が信頼を育てる

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「覚えていてくれた」が安心感につながる

また、日々多くの方の栄養指導を担当していると、継続の患者さんでも、前回お話しした内容やその方の生活をすぐに思い出せないこともよくあります。
しかし、管理栄養士にとっては大勢いる患者さんの一人でも、患者さんにとっては「前回も会った管理栄養士」です。

だからこそ私は、面談の前にカルテを見返し、「どんな方だったかな」と生活を思い浮かべてからお会いするようにしています。

例えば、「ラーメン屋さん、その後も行かれましたか」「今年の繁忙期はいかがでしたか」と、以前のお話を踏まえて声を掛けると、「そうなんですよ」と嬉しそうに話してくださる方が多くいらっしゃいます。

患者さんにとって、「あなたのことを覚えています」というメッセージが伝わることは、安心して相談できる関係づくりの第一歩なのだと感じています。

チームで継続して支えていることを伝える

時折、患者さんから「以前の栄養指導で、管理栄養士さんが変わるたびに最初から話さないといけなくて大変だった」というお話を伺うことがあります。

複数の管理栄養士のいる病院やクリニックでは、栄養指導の担当者が変わることは日常茶飯事です。だからこそ大切なのは、「同じ管理栄養士が担当し続けること」よりも、「担当者が変わっても、チームとしての支援が続いている、と患者さんに伝わること」ではないでしょうか。

「前回の管理栄養士からこう伺っていますよ。」といった一言や、前回の相談内容を踏まえた声掛けがあるだけで、「ちゃんと自分の話が伝わっているんだな」という安心感につながります。

その方らしさを一つ記録する

そのための工夫として、私はカルテに「その方らしさが伝わるエピソードを一つは記録する」ようにしています。

例えば、「ラーメン屋巡りが楽しみ」「来客と一緒にお菓子を食べるのが好き」のような、その方の生活や価値観が伝わる一言です。

次回、その話題から会話を始められれば、もし担当者が変わった場合でも「ちゃんと話が伝わっている」と感じてもらいやすくなります。
この「その方らしさが伝わるエピソードを一つは記録する」という行動が、患者さんとの信頼関係をチームでつないでいく、小さなバトンになると感じています。

安心して続けられる栄養指導を目指す

栄養指導や特定保健指導に来られる方が、必ずしも最初から行動を変えることに前向きであるとは限りません。「また食事のことを注意されるのではないか」「怒られるのではないか」と、不安な気持ちで来室される方も少なくありません。

そこで私は、栄養相談に来てくださったこと自体を、まず肯定するようにしています。

実際、自覚症状に乏しい生活習慣病の方では、治療の中断が大きな課題の一つとなります。だからこそ、「継続して通院できていること、それ自体がすごいことですよ!」とお伝えしています。

行動変容とは、単に食事を変えることだけではありません。受診を続け、栄養相談の席に座ってくれる、その行動自体を一緒に喜びたいと思っています。

おわりに

日々の栄養指導では、「もっと伝えればよかった」「あれも話せばよかった」と反省する日も多いものです。


それでも、患者さんが「また相談したい」と思ってくだされば、必ず次の機会があります。

一度の栄養指導で完璧を目指すより、「何かあったらいつでも来てくださいね」と言えて、患者さんからも「管理栄養士さんに話を聞いてほしくて来ました」と言っていただけるような関係を築くこと。
そうした小さな積み重ねが、結果として患者さんの行動変容を支えていくのだと思っています。

プロフィール

お茶の水女子大学生活科学部食物栄養学科卒業後、同大学大学院修士課程、筑波大学大学院博士課程を修了。内分泌・代謝内科クリニックや総合病院で栄養指導に携わり、大学准教授を経て独立。現在は株式会社プラスウェル代表取締役として、企業での食事相談や商品開発に携わるほか、医療法人北国会 北川内科で対面・オンラインの栄養指導を行っている。

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