令和8年度診療報酬改定の施行を受けて、医療現場では制度の基本をあらためて確認することが重要になっています。診療報酬は医療行為の対価だけでなく、入院時の食事や栄養管理、多職種連携といった「質の高い医療」を評価する仕組みです。本コラムでは、管理栄養士の皆さんが知っておきたい診療報酬制度の基礎から、食事・栄養に関わる主な評価項目を最新の改定のポイントを含めて分かりやすく整理します。
PROFILE

群馬県済生会前橋病院 栄養科 栄養士長
宮崎 純一先生
診療報酬とは、保険医療機関や保険薬局が医療サービスを提供した対価として、保険者から受け取る報酬のことです。
日本では「国民皆保険制度」により、患者の自己負担分(原則1~3割)と公的医療保険によって医療費が賄われています。診療報酬制度では、国が診療や検査、治療などの医療行為ごとに点数を定めており、「1点=10円」として計算されます。この点数は、医療技術の進展や経済状況(物価・賃金など)を反映し、原則2年ごとに改定されます。今回の令和8年度改定でも現場の実態に即した見直しが行われました。
「入院時食事療養費」とは、入院患者さんに提供される食事の費用について、公的医療保険から一定額が支払われる制度のことです。入院時に必要な食費は、国が1食あたりの総額と自己負担額を定めており、患者さんは定められた「標準負担額」を支払い、残りの「食事療養基準額」との差額は保険から入院時食事療養費として給付されます。
「入院時食事療養費(給付額)」=「食事療養基準額(総額)」-「標準負担額(自己負担)」
入院時食事療養費は長らく据え置かれていましたが、近年の物価高騰を受け、令和6年度改定で30年ぶりとなる引き上げ(30円/食)が行われました。その後も令和7年度に20円/食、今回の令和8年度の改定では原則40円/食と、段階的な見直しが続いています(※低所得者は所得区分等に応じて20~30円/食)。
ここで知っておきたいのが、引き上げ分が患者負担となる背景です。これには「在宅で療養する患者さんは家計から食材費を負担しており、入院患者さんと負担の相違がないようにする」という公平性の観点があります。医療従事者も、単なる「値上げ」ではなく、社会情勢や制度のバランスを踏まえた変化であることを理解しておく必要があるでしょう。
患者の自己負担が令和8年度より1食当たり550円になること(一般所得者の場合)を踏まえ、単なる赤字の補填ではなく、給食の質も見直す必要があることが考えられます。
「特別食加算」は、糖尿病や腎臓病などの疾患に対して、治療の一環として特別な栄養管理を行った場合に算定できるものです。医師の指示のもと、病態に応じた食事を提供した場合に算定できます。対象となる疾患や食事内容については、あらかじめ基準が定められており、適切な栄養管理の実施が求められます。また、管理栄養士や栄養士が食事内容の作成や管理に関与することが前提とされています。
令和8年度診療報酬改定では、摂食・嚥下機能が低下した患者への対応として、新たに「嚥下調整食」が特別食加算の対象に追加されました。今後は個々の嚥下能力や栄養状態に合わせた嚥下調整食の重要性が、より明確に評価されることになります。
なお、特別食加算の対象となる嚥下調整食は、おいしく安全な食形態で適切な栄養量を有する嚥下調整食に対して新たに評価するとされており、標準化したものが求められているといえるでしょう。
栄養管理に関する加算には、さまざまな種類があります。主な加算項目をその性質ごとに3つのカテゴリーで整理しました。
専従の常勤管理栄養士が1名以上配置されている病棟において、必要な栄養管理を管理栄養士が実施した場合に算定され、入院初日と退院時に各1回に限り270点が加算されます。
令和8年度の改定では、病棟に専従配置されている管理栄養士が病棟業務に影響のない範囲で、当該病棟から退院した患者に対して、継続的な外来栄養食事指導等の支援を行って差し支えないこととされています。また、当該病棟に入棟予定の患者について、入退院支援部門と連携し、入院前の栄養状態の評価等を行うことも差し支えないとされています。
医師、看護師、薬剤師、管理栄養士などで構成されるNSTが低栄養患者に対して専門的な栄養管理を行う場合に算定されます。低栄養患者へのチームアプローチを評価するもので、NST回診などを実施した場合は、週1回あたり200点が加算されます。
リハビリテーション、栄養管理、口腔管理を多職種で連携して行う体制を評価することを目的に令和6年度改定で新設された加算です。急性期病棟に入院中の患者のADLの維持、向上等を目的に、早期からの離床や経口摂取を図るために、多職種による取り組みを行った場合に算定できます。
①リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算1(1日につき)150点
②リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算2(1日につき) 90点
令和8年度の改定では、加算1の点数が引き上げられたとともに、施設基準を緩和した加算2が新設されました。
前述の通り、糖尿病や腎疾患などの病態に応じた食事療法を実施した場合に算定され、1食につき76円(1日3食を上限)が設定されています。令和8年度の改定では、特別食加算の対象として嚥下調整食が新たに追加されました。
手術前後の適切な栄養管理を推進するため、術前から術後まで計画的な栄養管理を行う場合に算定され、1手術あたり270点が加算されます。
入院中でない患者に対し、医師の指示に基づき管理栄養士が個別の栄養・食事指導を行った場合に算定され、初回260点、2回目以降200点などが加算されます。
令和8年度の改定では、2回目以降に情報通信機器または電話による追加指導を行った場合の区分が新設されました。なお追加指導は、時間にかかわらず必要な指導が行われた場合に算定可能とされています。
在宅療養中の患者宅などを訪問し、管理栄養士が栄養食事指導を行う場合に算定されます。単一建物診療患者が1人の場合は1回530点、単一建物診療患者が2人以上9人以下の場合は460点で、患者1人につき月2回まで算定可能とされています。
退院時などに栄養状態や食事形態などの情報を医療・介護機関へ共有することを評価する加算で、入院中に1回70点が算定されます。
円滑な在宅療養への移行や在宅療養の継続のため、医師の指示に基づき、医療機関の管理栄養士が訪問し栄養指導を行う制度です。令和8年度改定で新設された退院後の栄養支援を評価する新たな仕組みで、1回あたり530点が算定できます(退院後1ヶ月、4回まで)。対象は特別食を必要とする患者や、がん、摂食機能または嚥下機能が低下した患者、低栄養状態にある患者です。
1ヶ月以降で栄養食事指導が必要な場合は「外来栄養食事指導料」や「在宅患者訪問栄養食事指導料」、介護保険の居宅療養管理指導料などの継続を検討します。
診療報酬は、私たちの「栄養管理の価値」を国がどう評価しているかを示すものだと考えられます。制度の背景や加算の意味を理解することは、自らの業務が社会の中でどう位置づけられているかを再認識することにつながります。
今回の改定では、栄養関連項目が引き続き複数取り上げられ、栄養管理の重要性が制度の中で継続して評価されました。一方で、制度としては評価されていても、現場で十分に活用されていない項目があることも、これまでの課題として指摘されています。
各医療機関で算定体制を整え、まずは一例でも実際の運用につなげていくことが重要になると思います。多職種連携や外来・在宅との連携を意識した制度も示されており、入院から退院後まで切れ目のない栄養管理体制の整備が期待され、制度を活用しながら、管理栄養士がチームの中で専門性を発揮していくことが今後の重要なポイントになると考えられます。
監修:群馬県済生会前橋病院 栄養科 栄養士長 宮崎 純一先生
専修大学経済学部経済学科卒業後、桐生短期大学生活科学科にて栄養士資格を取得。栄養士の実務経験を経て2004年に管理栄養士国家資格を取得し、群馬循環器病院を経て、2010年からは群馬県済生会前橋病院に勤務。がん病態栄養専門管理栄養士の資格を有する。
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