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【専門家に聞く】IBD(炎症性腸疾患)患者の食事の注意点・心がけるとよいことは?

腸の炎症によって腹痛や下痢などが起こるIBD(炎症性腸疾患)とは、主に潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)の2つの病気を指します。これらの病気は “活動期”と“寛解期”を繰り返すという特徴があり、特に活動期には食事に対する注意が必要です。今回は専門家監修のもと、IBDの特徴や、症状の悪化を防ぐためのポイントについて解説します。

PROFILE

札幌医科大学医学部 消化器内科学講座 教授

仲瀬 裕志先生

IBDの特徴

IBDとは、どのような病気なのでしょうか。

IBD(炎症性腸疾患)は腸に慢性的な炎症が起こる病気で、一般的には潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)の総称です。長期的には、症状が悪化する時期(活動期)と症状が安定している時期(寛解期)を繰り返すという特徴があります。

どちらの病気も原因は完全には解明されていませんが、免疫異常や環境因子、遺伝的要因が複雑に絡んでいると考えられています。現在のところ完全な治癒は難しいものの、治療によって症状を長期にわたりコントロールすることは可能です。実際に近年は効果が期待できる治療薬が複数登場し、症状をコントロールしながら生活する患者さんが増えてきています。

IBDは特に若い世代に多く、日本では1990年代以降、患者数が急速に増えているのが特徴です1)2023年に行われた全国疫学調査では、潰瘍性大腸炎は約31.7万人、クローン病は約9.6万人と報告されています2)2015年に実施された同疫学調査と比べて、潰瘍性大腸炎、クローン病の患者さんともに約1.4倍増加したことが明らかになりました。

潰瘍性大腸炎とクローン病の違い

潰瘍性大腸炎とクローン病は、どのような違いがあるのでしょうか。

潰瘍性大腸炎では血便や下痢が多いのに対して、クローン病では腹痛や下痢が多いのが特徴です。また、どちらも発熱や倦怠感などの全身症状や、口内炎、目や皮膚の炎症、関節の痛みなど、腸以外の症状が現れることもあります。

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食事の注意点

症状の悪化を防ぐために、IBDの患者さんは食事でどのような工夫をしたらよいのでしょうか。

活動期は、腸管の安静を図るため「低脂肪・低残渣(ていざんさ)」の食事が基本です。特に、腸の蠕動運動を刺激し粘膜を傷つける恐れのある不溶性食物繊維(玄米、きのこ類、ごぼう等の根菜類)や、腸管への刺激が強い香辛料、アルコールは控えることが望まれます。症状が出ている間は脂質を控え、消化しやすく刺激の少ない食事を意識することが大切です。

寛解期に入ると過度な制限は不要ですが、クローン病では、食事内容が症状や病勢に影響することがあります。特に脂質が症状を誘発・増悪させる患者さんもいるため、再燃予防を目的として、継続的な脂質制限を検討・推奨する場面があります。一方、潰瘍性大腸炎では食事内容が直接再燃に関与するエビデンスは少ないものの、暴飲暴食を避け、バランスのよい食事を維持することが大切です。ただし腸が狭くなっている「狭窄」がある場合には、きのこ類やごぼう、れんこん、こんにゃく、もやしなどに含まれる不溶性食物繊維が詰まりやすくなるため、摂取を避けたほうがよいでしょう。

またどちらの病気も唐辛子やペッパー類、からし、わさびといった刺激の強い香辛料は、下痢や腹痛を悪化させる要因となることがあります。そのため、こうした香辛料の使用量や摂取頻度には注意することが大切です。

ほかに避けた方がよい食品、逆に積極的にとった方がよい食品がありましたら教えてください。

近年のIBDの増加には、加工食品に含まれる食品添加物との関係が複数の研究で指摘されていますが、まだ因果関係は確定的ではありません。活動期や体調が不安定な時期は、可能な限り加工度の低い食材を選ぶとよいでしょう。

また、寛解期には腸内環境を整えるために水溶性食物繊維やプロバイオティクス(乳酸菌など)の摂取が勧められています。

脂質は控えた方がよいのでしょうか。

脂質は「量」だけでなく、「質」の選択が重要です。近年の研究では、オメガ3(n-3)系脂肪酸(魚油、アマニ油など)が持つ抗炎症作用が、腸管炎症の軽減に寄与する可能性が示唆されています3)。一方で、肉類やバターに多い飽和脂肪酸や、加工食品・植物油に多いオメガ6n-6)系脂肪酸の過剰摂取は、炎症を促進しやすいと考えられています。

栄養指導の際は脂質全体の摂取量を抑えたうえで、脂質を使用する場合はオメガ3を優先し、オメガ6を控えるよう伝えるとよいでしょう。また、脂質制限によりエネルギー不足が懸念される場合は、消化吸収経路が異なり短時間でエネルギーになりやすい中鎖脂肪酸油(MCT)の活用も有効な手段です。

ほかに日常生活で患者さんが心がけるとよいことがありましたら、教えてください。

寛解期にはストレスや疲労をため過ぎず、暴飲暴食を避けるなど、日常生活の基本的な管理を心がけることが大切です。活動期には、十分な睡眠と休養を確保し、腸に負担の少ない食品を中心としたバランスのよい食事をとるとよいでしょう。

外食時などは、体調に合わない食品を避け、無理なく食べられるものを選ぶことが重要になります。安心して食事をとることができるお店を、自ら選ぶのも1つの方法です。

なお、クローン病では腸を休ませる目的で栄養療法が行われることがあります。また、特にクローン病では喫煙は症状悪化の明確なリスク因子であるため、禁煙が強く勧められます。

監修:札幌医科大学医学部 消化器内科学講座 教授 仲瀬 裕志先生

【参考】

1) 日本消化器病学会 編, 炎症性腸疾患(IBD)ガイド2023, https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/disease/pdf/ibd_2023.pdf (2023).

2) T. Hisamatsu, A. Tsutsui, Y. Murakami, et al., Journal of Gastroenterology (2025). Doi 10.1007/s00535-025-02295-z.

3) P. C. Calder, Inflammatory Bowel Diseases, 25(5): 761-776 (2019).

仲瀬先生からのメッセージ

IBD患者さんの栄養管理にかかわる管理栄養士などの医療従事者へ向けてメッセージをいただけますでしょうか。

入院中以外は、IBD患者さんが日常の食事管理を自己実践する必要があります。そのため、退院後の継続を見据え、患者さんの生活状況・嗜好・調理環境を踏まえて「実行可能な食事内容」を事前に十分共有しておくことは、不安の軽減およびセルフマネジメント支援につながります。

なお、IBD患者さんにおける許容食品・回避推奨食品は個人差が大きい点に留意が必要です。新規食品の導入は寛解期など体調が安定している時期に、少量から段階的に試すよう指導し、症状出現時の振り返りができるよう記録(食事・症状)の活用も併せて提案するとよいでしょう。必要に応じて、家庭食に加え、外食や市販惣菜を選択する際のポイント(脂質量、調理法、食物繊維量、香辛料など)も具体的に提示することをおすすめします

【仲瀬先生ご略歴】

神戸大学医学部医学科卒業、京都大学大学院医学研究科内科系専攻博士課程修了および学位取得。米国ノースカロライナ大学消化器病センター博士研究員、京都大学消化器内科学産学官連携講師、同大医学部附属病院 内視鏡部 部長などを経て、2016年より現職。炎症性腸疾患の病態研究に尽力。

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