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【専門家に聞く】がん患者の栄養管理のポイント
〜体重減少を防ぐために〜

がんの患者さんには、体重減少が起こりやすいことが知られています。体重減少は、予後不良やQOL(生活の質)の低下などさまざまな不具合につながる可能性があるため、適切な栄養管理による体重減少の予防や対策が大切です。今回は専門家監修のもと、がん患者さんの体重減少に対する栄養管理のポイントについて解説します。

PROFILE

国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター 栄養管理部 栄養管理室 栄養管理室長

土屋 勇人先生

がんの患者さんが体重減少しやすい理由

がんの患者さんには、なぜ体重減少が起こりやすいのでしょうか?

がんの患者さんは、治療の副作用や病状の進行、がん悪液質の影響などによって、体重減少が起こりやすい状態にあります。これは消化器がんなど、栄養素の摂取や消化、吸収に関わるがんに限りません1)。がんの種類や進行度によって違いがあるものの、がんの患者さんにはどの段階でも体重減少が起こる可能性があります。たとえば初診時であっても、すでに15〜40%の患者さんに体重減少が見られるといわれています2)

特に化学療法中は、抗がん剤の副作用の影響で食事をとることが難しくなる傾向にあります。外来化学療法中のがん患者さんの栄養に関する主訴として、約半数の方に体重減少があったという報告もあります3)

なお、栄養管理が必要となる医学的な体重減少の目安は、ダイエットなどを行っていないにもかかわらず6〜12か月で4.5kg以上の減少が、もしくは5%以上の減少(体重80kgの方であれば、4kg以上の減少)が起こった場合です4)

がん悪液質:持続的な骨格筋量の減少を特徴とする多因子性の症候群であり、典型的な症状には体重減少と食欲不振がある。

体重減少による具体的なリスクについて教えてください

がん患者さんの体重減少は、予後不良やQOLの低下につながる可能性があります5)。また、予定されていた治療の変更や中止につながり、治療効果や生存率に影響を及ぼす恐れがあります6)。このようなリスクをできる限り防ぐために、体重減少の予防や対策が大切になります。

体重減少の予防・対策のポイント〜エネルギー摂取の重要性〜

がん患者さんの体重減少の予防や対策のためには、どのような工夫をしたらよいのでしょうか?

体重減少を防ぐためには体格を維持するための十分なエネルギーが必要ですが、治療の副作用で食欲不振や味覚障害が現れているような患者さんでは、食事から十分なエネルギーを摂取することが難しくなる傾向にあります。

効率的にエネルギーを摂る方法の1つが、油脂の活用です。油脂は9kcal/g7)と他の栄養素よりもエネルギーが高いため、食事量が低下したときでも効率的にエネルギーを摂取しやすく、患者さんの体重減少の抑制につながります。油脂の中でもMCTオイルは消化吸収がよく、エネルギーになりやすいという特徴があります8)

また、オメガ3脂肪酸が豊富に含まれている魚油には抗炎症作用があることが分かっている9)ため、同じようにオメガ3脂肪酸が含まれている油(アマニ油やえごま油などに豊富に含まれている)の積極的な摂取によって、がん患者さんの体調改善につながる可能性があります。

実際の栄養指導で活用できるような、体重減少対策のためのポイントがありましたら教えてください

体重減少のある患者さんへの栄養指導は、その方の病状やライフスタイルなど、さまざまな背景を考慮し行う必要があります。一度に十分な量の食事がとれない方も多いため栄養補助食品を取り入れたり、少量ずつ複数回に分けて食事をとる「分割食」を活用したりするのも有効でしょう。少量でもエネルギーを補いやすい食品を摂ることもおすすめです。

<コンビニでも手に入りやすいおすすめの間食>

コンビニでも手に入れやすく、効率的にエネルギーアップにつながる間食には、以下のようなものがあります。

・アイスクリーム、ゼリー、ヨーグルト、プリン:冷えたデザートはのど越しがよく、食欲不振が現れているような患者さんも食べやすいでしょう。特にアイスクリームはエネルギーアップにも適していますので、栄養成分表示を確認しながら選ぶとよいでしょう。

・カステラ、チョコレート、ナッツ、チーズ:間食として取り入れれば、少量でもエネルギー摂取につながります。

<おすすめの食品やエネルギーアップの方法>

ほかにも、以下のような食品はコンビニでも手に入りやすくエネルギーアップにつながります。

・いなり寿司やのり巻き:少しずつ食べることができるので「分割食」にぴったりです。やや濃い目の味付けではっきりとした味わいで食べやすいでしょう。

・冷やし中華、冷麺:のど越しがよく、酸味があるので食べやすい点が特徴です。

・ミニサイズのゼリー飲料:気軽に食べることができ、持ち運びもしやすいので外出時にも適しています。

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以下のような“ちょい足し”をすれば、少量でも効率的なエネルギーアップが期待できます。

たとえば麺類やサラダ、お味噌汁などにアマニ油やえごま油などを、パンにバターやピーナツクリーム、クリームチーズなどをちょい足しするのがおすすめです。また、料理にマヨネーズやMCTオイルをちょい足しすれば食事のカサを増やさずに手軽にエネルギーを摂ることができます。少量でエネルギーを補給できる栄養補助食品がネットでも購入できるため、そちらを患者さんにおすすめしてもよいでしょう。

土屋先生からのメッセージ

がん患者さんの栄養管理にかかわる管理栄養士などの医療従事者へ向けてメッセージを いただけますでしょうか

適切な栄養管理のためには、医師や看護師、薬剤師などの医療職と日頃から情報共有を行いながら、より良い連携を図ることが大切です。

実際の栄養食事指導では、患者さんのライフスタイルなども考慮し、その方が取り入れやすい工夫をお伝えすることが大切です。ご紹介したコンビニ食品などの市販品も活用しながら、患者さんの摂取エネルギーアップにつながるような方法を提案していただければと思います。

監修:国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター

栄養管理部 栄養管理室 栄養管理室長 土屋 勇人先生

国立病院機構 災害医療センター、国立病院機構 関東信越グループ栄養専門職、国立がん研究センター中央病院を経て現職。栄養サポートチーム専門療法士、臨床栄養代謝専門療法士(専門領域:がん専門療法士)、がん病態栄養専門管理栄養士の資格を有する。


【参考】

1) 日本栄養治療学会編『がん患者診療のための栄養治療ガイドライン2024年版 総論編』(2024)P22
2) 日本栄養治療学会編『がん患者診療のための栄養治療ガイドライン2024年版 総論編』(2024)P17
3) 天野ら『日本静脈経腸栄養学会雑誌』(2018)33(4),1006-1012
4) JUGLER編『内科外来診療の掟』(2024)P25
5) 日本栄養治療学会編「がん患者診療のための栄養治療ガイドライン2024年版 総論編」P25
6) 日本栄養治療学会編「がん患者さんのための栄養治療ガイドライン2025年版」P50
7) 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(2025)P145
8) Harsh B Jadhav et al. J Food Sci Technol. 2022 Jun 22; 60(8): 2143–2152.
9) 西 大輔『日本生物学的精神医学会誌』(2018)29(4): 177-181

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