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【専門家に聞く】COPD患者に対する食事のポイント
〜体重減少のリスクとその対策〜

慢性的な咳や痰、息切れなどが現れるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)。これらの症状に加えて、実はCOPDでは体重減少が起こる頻度が高いという特徴があります。体重減少はQOL(生活の質)の低下につながるだけでなく、命にかかわる可能性もあるため注意が必要です。今回は専門家監修のもと、COPDという病気の特徴や、患者さんの体重減少を防ぐためのポイントについて解説します。

PROFILE

慶應義塾大学医学部 内科学教室(呼吸器)教授/ 慶應義塾大学病院 病院長

福永 興壱先生

COPDの特徴

COPDとは、どのような病気なのでしょうか。

COPDは、タバコの煙などの有害物質を長期間にわたり吸い込むことで、気管支の炎症や肺の組織(肺胞:はいほう)の破壊が進み、肺で酸素を十分に取り込めなくなる病気です。中高年以降の発症が多く、男女比では男性が多いといわれています。

初期には自覚症状が少ないものの、進行すると慢性的な咳や痰、動作時の息切れ、ゼーゼーとした呼吸などの症状が現れるようになります。

またCOPDの患者さんは病気の進行により免疫力が低下し、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすく、重症化しやすいことも特徴です。

さらに、COPDでは体重減少がみられることも多く、たとえば重症(Ⅲ期以上)の気流閉塞を有する患者さんでは、約40%に体重減少がみられるといわれています。

肺胞:肺の中の袋状の組織で、酸素と二酸化炭素を交換する役割がある。

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COPDの患者さんが痩せやすい理由と、そのリスク

体重減少のお話がありましたが、COPDの患者さんはなぜ痩せやすくなるのでしょうか。

COPDが進行すると肺のはたらきが低下し、呼吸筋を余計に動かさなければならないため、通常よりも多くのエネルギーを消費します。さらに、肺の炎症が全身に広がることで、基礎代謝が高まりエネルギー消費が増えるとも考えられています。

このような理由から、COPD患者さんは健康な人に比べて呼吸消費エネルギーが約10倍にもなるといわれています。

一方で、肺の膨張による胃の圧迫や息苦しさなどから、食欲が低下しやすいことも分かっています。こうしたエネルギー消費の増加と食事摂取量の減少が重なり、体重減少を招きやすくなるのです。

COPDの患者さんが痩せると、どのようなリスクがあるのでしょうか。

COPDの患者さんが痩せると、病気が増悪(急激に悪化すること)しやすくなります。また、サルコペニア(筋肉量の減少、筋力の低下が起こった状態)のリスクが高まり、歩行困難や寝たきりにつながる可能性があります。結果として、QOLの低下や命にかかわることがあるのです。特に6か月以内で10%以上の体重減少が生じた場合には、注意する必要があるでしょう。

食事で意識すべきポイント-脂質が鍵に

COPD患者さんの体重減少を防ぐために、どのような工夫をしたらよいのでしょうか。

体重減少を可能な限り防ぐためには、食事から十分なエネルギーを摂取することが大切です。栄養バランスも意識しつつ、炭水化物をやや控えめにし、たんぱく質と脂質を中心に摂るとよいでしょう。

炭水化物を多く摂取すると体内に二酸化炭素が溜まりやすくなり、血液が酸化してさまざまな臓器に悪影響を及ぼす可能性があります。

筋肉量を維持するためには、肉、魚、卵、大豆製品などのたんぱく質を含む食品を毎日メニューに取り入れるなど、脂質とたんぱく質を優先して摂れるように意識した献立を心がけるとよいでしょう。

また、エネルギー補給には油脂類の活用が有効です。特にCOPDの患者さんでは、いくつかの研究でMCT(中鎖脂肪酸)オイルがエネルギー補給や栄養状態の改善に役立つ可能性があることが示唆されています。

COPD患者さんに有効な食事の工夫

患者さんやご家族に提案できるような、具体的な食事の工夫がありましたら教えてください。

患者さんやご家族には以下のような工夫を提案するとよいでしょう。

・外出後は一度休憩し、落ち着いてから食事を始める

・満腹になるのを防ぐために、食事前に水分を摂りすぎることは控える

・高エネルギーの食品から食べるようにする

1回の食事量を減らし、56回に分けて食事をとるようにする

また油脂を食事にちょい足しすることで、エネルギーアップを期待することができます。特にMCTオイルは、多くの食品に含まれる脂肪(長鎖脂肪酸)と比べて消化・吸収しやすく、素早くエネルギーに変換されるのが特徴です。たとえば味噌汁やスープ、肉料理や魚料理に加えるのもよいでしょう。ほかにも、脂質を摂るためにごはんにバターを混ぜてバターライスにするのもおすすめです。

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福永先生からのメッセージ

COPD患者さんの栄養管理にかかわる管理栄養士などの医療従事者へ向けてメッセージをいただけますでしょうか。

COPDでは、QOLの低下や生命予後の悪化を防ぐために、痩せないことが重要になります。ただし「頑張って食べよう」と伝えるだけでは、患者さんにとって食事の時間がプレッシャーになってしまう可能性があります。心にも体にも負担をかけないような工夫が大切です。お伝えしたようなポイントを活用しながら、食事を楽しんでもらえるよう工夫するとよいでしょう。

慶應義塾大学医学部を卒業後、同大学にて研修医として勤務したのち同大学院内科学・呼吸循環器専攻を修了。東京大学大学院生化学分子細胞生物学講座、ハーバード大学医学部ブリガムウィメンズ病院博士研究員、慶應義塾大学医学部呼吸器内科准教授などを経て現職。特に喘息やCOPD、睡眠時無呼吸症候群を専門としている。

監修:慶應義塾大学医学部 内科学教室(呼吸器)教授/
慶應義塾大学病院 病院長 福永 興壱先生

【参考】

日本呼吸器学会COPDガイドライン第6版作成委員会 編『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022』メディカルレビュー社;2022.

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