「日本食品標準成分表」は、文部科学省より公表されている食品の成分値に関する公的なデータ集です。日本で常用されている食品の標準的な成分値を集めたもので、給食や調理現場における献立の栄養計算や、栄養指導・食育のための資料、そのほか教育や研究、行政における資料など、さまざまな分野で活用されています。
おおむね5年ごとに改訂されることが多いですが、次の改訂を待たずに、蓄積された新たなデータを追加した「増補」版が公表されることもあります。
現在の最新版は2020年に発行された八訂です(2025年12月時点)。それまでの七訂から八訂では、主に以下のような変更が行われました2)。
・エネルギー値の計算方法の変更
エネルギー値の計算方法が変更になり、多くの食品において、それまでよりもエネルギー値が低く算出されるようになりました(詳細は後述の「エネルギーに関する変更点は?」で解説)。
・食品数の増加・成分値の変更
収載食品数が増加しました。一例を挙げると、即席麺やカップ麺の調理後の成分値等が追加になっています。
・調理済み食品情報の充実化
近年需要が高まっている冷凍やチルド、レトルト食品等によって調理済み食品の情報が充実化しました。これらの食品群を「調理済み流通食品」と名付け、原材料配合割合をもとに算出された成分値や、素材の重量や成分の変化についての情報も収載されるようになりました。
2023年には、八訂の更新版である「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」が公表されました。更新版は、八訂と目的や収載成分項目、エネルギー計算方法などは同じものですが、収載されている食品や成分値については追加または更新が行われています。新規60食品を含む107食品を追加・更新し、食品成分表全体で2,538食品が収載されました3)。以下は、新たに追加になった食品等の例です。
<新たに追加された食品例>
万願寺とうがらし、島にんじん、九条ねぎ、めねぎ、ジョウルミート(生、焼き)、ランチョンミート、うぐいすあん、スイートチョコレート、缶コーヒー、お好み焼き、かきフライ、とりから揚げ、春巻きなど
<新たに追加された調理形態>
あずき(つぶし生あん)、だいずもやし(油いため)、乾燥わかめ(水煮)、まだこ(蒸し、油いため、素揚げ)、ばらベーコン(ゆで、焼き、油いため) など
八訂の変更点の中でも、エネルギー値に関する記載は大きな変更点といえるでしょう。
エネルギー値は、エネルギー産生栄養素の含有量に、それぞれのエネルギー換算係数をかけて計算した合計値です。このエネルギー産生栄養素には、主にたんぱく質、脂質、炭水化物があります。
八訂では、それまでの成分表と異なり、エネルギー計算に使用される「エネルギー産生栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物)」と「エネルギー換算係数」が両方とも変更になりました。エネルギー換算係数は、国際的に使用されているFAO(国連食糧農業機関)とINFOODS(国際食品成分データベースネットワーク)という国際機関が推奨するベースのものに変更になったのです4)。このエネルギー換算係数は、七訂とは異なり全食品で同じものが使用されています。
また八訂では、食物繊維に関する分析法の見直し(AOAC 2011.25 :米国の分析方法の導入)によって、従来は測定しきれなかった成分も食物繊維としてカウントされるようになり、測定範囲が広がりました。たとえば、じゃがいも(蒸し)は七訂に比べて約7倍も食物繊維の数値が増えました。このような変更によって差し引きで求められる「利用可能炭水化物=(総炭水化物-食物繊維等)」の値が変わり、結果としてエネルギー値が低く算出されるようになったのです2)。
これらの結果、八訂のエネルギー値は、それまでのエネルギー算出方法によるものと比べて全食品の平均が9%少なく出ることが報告されています 4)。
※1 アミノ酸組成たんぱく質:アミノ酸成分表に掲載されているアミノ酸の量をもとに計算して算出した、たんぱく質の量。
※2 脂肪酸のTG当量:脂肪酸の量を「中性脂肪(脂質)」として表した指標。
※3糖アルコール:炭水化物の中の「糖由来だが糖質とは違う」化合物群。
お伝えしたように七訂と八訂では、算出されるエネルギー値が異なりますが、実際の食事のエネルギー量は同じです。このため、エネルギー値が低く算出されるからといって、必ずしもエネルギー不足を意味するわけではありません。
・食事摂取基準(2025年版)との連携について
2025年版の食事摂取基準では、根拠となる研究データの多くが旧来の成分表に基づいていることなどから、指標となる数値は引き続き「七訂」に準拠したエネルギー量として策定されています。そのため、八訂の成分表で算出したエネルギー値とは数値にズレが生じることがあります。今後は八訂の成分表を活用した新たな栄養評価や摂取目標の見直しが期待されていますが、現段階では、この両者の算出方法の違いによる数値差を十分に理解し、現場での栄養評価においては柔軟に対応していく必要があるでしょう。
・病院や施設給食での対応
病院や介護施設などの現場では、患者や利用者の個別の栄養状態やエネルギー必要量に基づく評価が重視されます。八訂の成分表を用いた正確な栄養計算を実施しながら、必要に応じて摂取目標量の再検討や食事量の調整を行うとよいでしょう。なお、急激な変更による混乱を避けるため、当面は従来の計算方法と併用しながら移行することが推奨されます。
1) 文部科学省「日本食品標準成分表に関するQ&A」https://www.mext.go.jp/content/20230428-mxt_kagsei-index_020.pdf
2) 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」https://www.mext.go.jp/content/20201225-mxt_kagsei-mext_01110_011.pdf
3) 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」https://www.mext.go.jp/content/20230428-mxt_kagsei-mext_00001_011.pdf
4) 松本万里, 渡邊智子, 松本信二, 安井明美『食品のエネルギー値の算出方法についての検討: 組成に基づく方法と従来法との比較』日本栄養・食糧学会誌 (2020) 73(6), 255-64
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