厚生労働省は国民の健康の維持や増進を図るために、エネルギーや各栄養素における摂取量の基準を設定しています。それをまとめたものが『日本人の食事摂取基準』であり、これまでは5年ごとに内容の見直しや変更が行われてきました。今回は最新の2025年版の中から、特に高齢者の健康促進につながるようなポイントをご紹介します。
我が国では、2024年度に「健康日本21(第3次)」が掲げられ、生活習慣の改善や、生活習慣病の発症予防・重症化予防の観点を踏まえた取り組みが進められています。2025年版の『日本人の食事摂取基準』は、このような健康・栄養政策の動向を加味した内容となっています。
『日本人の食事摂取基準』で使用される指標には、主に以下のようなものがあり、これらの指標毎に摂取基準の量が示されています。
「推奨量」は、当該集団のほとんどの人(97〜98%)が、1日の栄養素の必要量を満たすと推定される量のことです。これは摂取不足を回避する目的で設定された指標で、推定平均必要量を用いて算出されています。
「目標量」は、生活習慣病の発症予防を目的として設定される値です。病気になるリスクを下げたり、栄養状態を改善したりするために、目標とするべき摂取量として定められています。
高齢者に対しては、活動量の低下や筋肉量の減少を考慮した推定エネルギー必要量が設定されています。特にたんぱく質の摂取不足は、フレイル*の発生や進行のリスクになると考えられており、その予防のために高齢者のたんぱく質摂取の重要性がより強調されました。具体的には、65歳以上の高齢者に対する目標量の下限(総エネルギーの15%以上)が強く押し出されました。
*フレイル:加齢による心身の衰えのことで、健康な状態と要介護状態の中間の状態を指す。

※加齢に伴って活動量が大きく低下した者など、必要エネルギー摂取量が低い場合には下限が推奨量を下回る可能性があるが、このような場合でも下限は推奨量以上とすることが望ましいとされている。
なお、食事摂取基準の対象は、「健康な個人及び健康な者を中心として構成されている集団」とされています。一方、病気の患者さんや要介護者の方は、個別の病態を考慮した栄養管理を優先することとされています。
高齢社会における骨粗鬆症の予防などを考慮し、「生活習慣病及び生活機能の維持・向上に係る疾患等とエネルギー・栄養素との関連」の疾患群に「骨粗鬆症」が追加されました。

閉経後の女性の骨量減少や加齢に伴う骨密度の低下などをできる限り抑えることを重視し、カルシウムやビタミンD、たんぱく質などとの関連が記載されています。なお、骨粗鬆症予防の最終的な目標は骨折の予防とされています。
フレイルや骨粗鬆症の予防などの観点から、関連栄養素(ビタミンDなど)の記載の拡充も行われました。特にビタミンDは、カルシウムの吸収に役立つ栄養素です。ビタミンDの不足によって高齢者の骨折リスクが高くなることを考慮し、目安量が見直されました。
ビタミンDは食事だけではなく皮膚でも産生されます。そのため目安量には、紫外線暴露によるビタミンDの皮膚での合成も考慮し、北欧諸国の食事摂取基準における推奨量と現在の摂取量の中間値を採用。18歳以上の男女の目安量は9.0μg/日という形に目安量が上がっています。
高齢者の体重減少を防ぐためには、エネルギー供給源である脂質も重要です。成人と高齢者の総脂質エネルギー比の目標量は、20〜30% に設定されています。
飽和脂肪酸は高LDLコレステロール血症の主な要因の1つであり、循環器疾患や肥満のリスク要因でもあるため、生活習慣病の発症を防ぐという観点から目標量が設定されました。具体的には総エネルギーの10%未満に抑えることが強調され、高齢者の目標量(上限)は7%とされています。
一方、n-6系脂肪酸*やn-3系脂肪酸**については、以下のような目安量が設定され、必須脂肪酸(n-3系脂肪酸など)の摂取が重視されたといえるでしょう。
*n-6系脂肪酸:体内で合成できない必須脂肪酸の1つであり、大豆油やコーン油などの植物油に含まれている。血液中のコレステロールや血圧を下降させる作用があるといわれている。
**n-3系脂肪酸:必須脂肪酸の1つであり、植物油や魚介類に多く含まれ血液中の中性脂肪や血圧を下げるなど多様な作用があるのが特徴。

一方、トランス脂肪酸は摂取をできるだけ控えるよう明記されました。健康のためにトランス脂肪酸の積極的な摂取は勧められないことから、その摂取量は1%エネルギー未満にとどめることが望ましいとされています。
2025年版でも、年齢や性別、身体活動レベルに応じたエネルギー・各栄養素の摂取量の基準が設定されており、多様な生活背景への対応につながることが期待されます。特に高齢者のフレイル予防には、栄養管理が欠かせません。脂質の活用も含めて、高齢者の健康維持につなげていきましょう。
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厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
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