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【専門家に聞く】今さら聞けない「嚥下調整食の分類」のポイント
〜学会分類を栄養支援に生かすために〜

医療従事者にとって、「個々の患者さんに適した食形態の選択」は、安全性と栄養量の確保の両立を左右する重要な判断です。その一方、栄養管理の現場では食事形態の名称や基準が施設や職種ごとに異なり、情報共有の難しさが課題となってきました。こうした背景から多施設・多職種をつなぐ“共通言語”として策定されたのが「日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類(以下、学会分類)」です。今回は、学会分類の内容と役割、他の分類基準との違いについて、わかりやすく整理します。

PROFILE

神戸学院大学栄養学部 教授・県立広島大学 名誉教授

栢下 淳先生

なぜ分類基準が大切なの?

嚥下調整食を提供するうえで、なぜ分類基準が重要な役割を果たすのでしょうか。

嚥下調整食の分類基準は、嚥下機能が低下した方でも安全に食事を摂取できるようにするための共通の指標です。食形態やかたさ、とろみの程度を統一することで、誤嚥や窒息のリスクを減らし、医療・介護現場での情報共有を円滑にします。また、適切な形態を選ぶことは食事量の確保につながり、低栄養や体重減少の予防にも寄与します。安全性と必要な栄養素の確保の両立を図るうえで、分類基準は重要な役割を担っているのです。

学会分類が作成された経緯

栄養管理の多くの現場で活用されている「学会分類」は、どのような背景があり誕生したのですか。

国内の嚥下調整食は、長らく病院や施設ごとに独自の名称や形態で提供されてきました。例えば、食事では「きざみ食」「ミキサー食」「ムース食」、飲み物では「ポタージュ状」「ケチャップ状」のとろみといった呼称が用いられていましたが、実際には施設によって「かたさ」や「粘度」などの物性基準が異なり、転院や在宅移行の際に正確な情報共有が難しいという大きな課題がありました。

そこで、2010年に日本摂食嚥下リハビリテーション学会において、嚥下調整食特別委員会が発足し、専門家による検討が開始されました。そのような中で、急性期病院の段階的嚥下食として知られていた「嚥下食ピラミッド」等の概念を整理・統合する形で、2013年に初版として「日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類2013(以下、学会分類)」が策定されたのです。

「学会分類」が目指すもの

学会分類の目的について教えてください。

嚥下調整食は、医療機関から介護施設、在宅へと支援の場が移行する中で提供者が変わることがあるため、共通の基準が不可欠です。学会分類は、多職種・多施設で共有できる食形態の基準を示し、引き継ぎや情報共有を円滑にします。また、嚥下機能に応じた段階的な整理により、誤嚥や窒息のリスクを抑えた安全な経口摂取を支援し実臨床での使いやすさにも配慮されています。

「学会分類」のポイント

学会分類の特徴について、ポイントを教えてください。

1.食事ととろみに分かれる

学会分類は、「学会分類(食事)」と「学会分類(とろみ)」に分かれています。これにより、食事形態と飲水調整を個別に評価・指示することが可能となり、実臨床で頻繁にみられる「食事は可・液体のみ調整が必要」といった状況にも対応しやすい構成となっています。

2.学会分類(食事)はコードによって5段階に分類

誰でも客観的に判断できるよう、物性に基づいてコード0〜4を用いた段階的分類で示されています。それぞれについて、かたさ・均質性・まとまりやすさ・付着性など、嚥下機能に応じた性状が記載されています。

・嚥下訓練食(コード0

重度の症例に対する評価や、嚥下訓練の最初に用いる。

・嚥下調整食(コード14

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『日摂食嚥下リハ会誌25(2):135–149, 2021』の「学会分類2021(食事)早見表」を一部改変。表の理解にあたっては『嚥下調整食学会分類2021』の本文をお読みください。

3.学会分類(とろみ)は3段階

液体の「とろみの粘度」についても3段階を定義し、現場での主観的な判断を排除しました。

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『日摂食嚥下リハ会誌25(2):135–149, 2021』の「学会分類2021(とろみ)早見表」を一部改変。表の理解にあたっては『嚥下調整食学会分類2021』の本文をお読みください。

「学会分類2013」はその後、改訂されているのですね。

2013年に初版として「学会分類2013」が策定されましたが、新たな知見や現場からの意見(パブリックコメント)が寄せられました。このため初版から8年が経過した2021年に改訂版として「学会分類2021」が公表されたのです。学会分類2021では学会分類2013の基本的な分類構造は踏襲しつつ、解説やQ&Aの充実や、とろみの簡易測定法の追加、また他の分類との互換性の修正を行いました。2013年版に続き、量や栄養成分については設定せず、段階を形態のみで示しています。また物性測定値は示していません。早見表だけで判断せず、解説文を熟読のうえ、活用することとされています。

他基準との比較・整理

学会分類とほかの基準との違いを教えてください。

国内では学会分類のほかにも、いくつかの分類基準が存在しています。以下の表は、学会分類2021との違いをまとめています。

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・嚥下食ピラミッド

嚥下食ピラミッドは急性期病院(聖隷三方原病院)において、主に脳卒中患者を中心に提供されている段階的嚥下訓練食を示したもので、測定データから導かれた、かたさ、付着性、凝集性による物性基準が定められています。L0L5までの6段階に分かれており、L0L2までは均質な物性、L3以降は不均質な物性で、L5は普通食です。

・特別用途食品(えん下困難者用食品)

特別用途食品は消費者庁による表示・許可制度で、えん下困難者用食品は許可基準Ⅰ、許可基準Ⅱ、許可基準Ⅲがあります。それぞれ、かたさ、付着性、凝集性による物性基準が定められていますが、それらを満たして認可された加工食品には、マークとともに「嚥下を容易にし、誤嚥や窒息を防ぐために、かたさなどを調整した食品」などと表示することができます。

・UDF(ユニバーサルデザインフード)との関係

UDF(ユニバーサルデザインフード)は、日本介護食品協議会が制定した、噛む力や飲み込む力に合わせて選べる「食べやすさに配慮した食品」の規格です。「かたさ」や「粘度」を基準とした市販食品の区分で、食事は「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の4段階に分かれています。ほかに、飲み物にとろみをつけるための「とろみ調整」食品の規格もUDFで定められています。

栢下先生からのメッセージ

摂食嚥下にかかわる管理栄養士などの医療従事者へ向けてメッセージをいただけますでしょうか。

嚥下調整食をめぐっては、国際的にはIDDSI(国際嚥下食標準化構想)による標準化が進む一方、日本では複数の基準が併存する中で、学会分類2021は日本の臨床実態に即した共通言語として重要な役割を担っています。今後は、各基準の目的や位置づけを理解したうえで適切に使い分け、必要に応じて読み替えながら活用していくことが、現場から標準化を支える第一歩になると考えます。

監修:神戸学院大学栄養学部 教授・県立広島大学 名誉教授 栢下 淳先生

徳島大学医学部栄養学科を卒業後、同大学院博士前期課程を修了。県立広島大学人間文化学部健康科学科 教授などを経て、現職。日本摂食嚥下リハビリテーション学会の理事で嚥下調整食委員会 委員長を務める。

【参考】

1) 日本摂食嚥下リハビリテーション学会, 嚥下調整食学会分類2021(2021). https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf.
2) 消費者庁, 特別用途食品について. https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses
3) 日本介護食品協議会, ユニバーサルデザインフードとは. https://www.udf.jp/outline/udf.html.

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嚥下調整食の特徴

記事の詳細はこちらから

嚥下調整食について、解説しています。嚥下調整食は、加齢や疾患で嚥下機能が低下した方でも飲み込みやすいよう工夫された食事です。「学会分類2021」等の基準に基づき、とろみや硬さを調整します。

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